「会社を譲渡することになったが、従業員の履歴書には傷がつくのだろうか…」
「転籍や出向という複雑な経歴を、どう記載させれば彼らが不利益を被らないか知りたい」
事業譲渡やM&Aによる経営環境の変化は、経営者ご自身だけでなく、そこで働く従業員にとっても大きな転機となります。
これまで苦楽を共にしてきた社員を路頭に迷わせたくないという思いから、転籍や出向、あるいは退職といった処遇に関する悩みを抱える経営者の方は少なくありません。
本記事では、M&Aや事業再生の現場を知り尽くした専門家の視点から、事業譲渡に伴う経歴の正しい記載方法について詳しく解説します。
従業員が転職や再就職活動で不利にならないための具体的なノウハウをまとめました。
この記事でわかること:
- 事業譲渡による転籍・出向の正しい履歴書の書き方
- 「会社都合」として記載するための具体的な条件と記述例
- 吸収合併やグループ会社への転籍など複雑なケースの対処法
- 経歴を書かないことで生じる重大なリスク
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事業譲渡に伴う転籍・出向での履歴書の正しい書き方と書かないリスク
会社を譲渡する際、従業員の雇用契約がどのように引き継がれるかは非常に重要な問題です。
雇用が維持される場合でも、法律上の取り扱いとして「転籍」になるのか「出向」になるのかで、履歴書への記載方法は大きく異なります。
経営者としては、従業員に対して正しい経歴の書き方をアドバイスできるよう、基本的なルールを把握しておくことが求められます。
事業譲渡における転籍と出向の根本的な違い
まず前提として、履歴書に事業譲渡による異動を記載する際は、現在の雇用主が誰であるかを明確にする必要があります。
「転籍」とは、譲渡元の企業との雇用契約を一度解消し、譲渡先の企業と新たに雇用契約を結び直すことを指します。
一方で「出向」とは、譲渡元の企業に籍を置いたまま、譲渡先の企業で業務に従事する形態です。
履歴書への記載において、この二つは明確に区別して書かなければなりません。
転籍の場合は「〇〇株式会社に転籍」と記載し、出向の場合は「〇〇株式会社に出向」と事実のみを正確に記載するのが基本ルールとなります。
特に中小企業のM&Aにおいては、従業員の心理的負担も大きいため、経営者から丁寧に説明し、納得した上で手続きを進めることが重要です。
出向や転籍を履歴書に書かないことで生じる重大なリスク
従業員の中には、経歴が複雑に見えることを嫌がり、「転籍を履歴書に書かない」あるいは「出向の履歴書を書かない」といった選択を考える方もいるかもしれません。
しかし、これらの事実を意図的に隠すことは、経歴詐称とみなされる重大なリスクを伴います。
社会保険の加入記録や雇用保険の手続き履歴などから、異動の事実は採用企業に必ず発覚すると考えておくべきです。
事業譲渡による転籍や出向は、従業員自身のネガティブな理由によるものではありません。むしろ、企業の組織再編を経験し、異なる環境への適応力を持つ人材としてプラスに評価されるケースも多々あります。隠すのではなく、堂々と事実を記載することが転職活動における成功の鍵となります。
採用面接の場でも、事業譲渡という会社の大きな転換期にどのように業務へ向き合ったかを論理的に説明できれば、面接官に良い印象を与えることができます。
経営者としては、従業員が自信を持って次のステップへ進めるよう、「会社都合の異動であり、あなた自身の評価が下がるものではない」と伝えてあげることが最高の支援となります。
履歴書への転籍の書き方は会社都合?退職理由による記載の違い

事業譲渡に伴い、やむを得ず転籍を受け入れる場合や、条件面が合わずに退職を選択する従業員が出ることがあります。
このとき、履歴書の書き方として最も悩むのが、「自己都合」として処理されるのか、それとも「会社都合」として記載できるのかという点です。
経営者としては、彼らが少しでも有利な条件で再出発できるよう、正しい法的解釈と適切な記載方法を案内する必要があります。
事業譲渡に伴う転籍は原則として会社都合の書き方になる
事業譲渡が原因で転籍となる場合、それは従業員個人の意思ではなく会社の経営判断によるものです。
したがって、履歴書の転籍の書き方としては「事業譲渡に伴い、〇〇株式会社へ転籍」といった形で、会社都合であることを明記するのが一般的です。
この一文を添えるだけで、採用担当者は「本人の能力不足や人間関係のトラブルによる退職・異動ではない」と即座に理解してくれます。
⭕ メリット・強み
- 会社都合と明記することで面接官のネガティブな推測を防げる
- 事業再編という不可抗力であるため選考で不利になりにくい
- 失業保険の給付(特定受給資格者)において優遇される可能性がある
❌ デメリット・注意点
- 単に「退職」とだけ書くと自己都合と誤解される危険がある
- 面接で「なぜ残らなかったのか」と深掘りされる準備が必要
- 譲渡先との労働条件のすり合わせが不十分だとトラブルになる
一方で、譲渡先から提示された新しい労働条件に同意できず、転籍を拒否して退職するケースもあります。
この場合も、給与の大幅な減額や勤務地の大幅な変更など、労働条件の不利益変更が原因であれば、「会社都合退職」として扱われる可能性が高くなります。
退職証明書や離職票の発行時には、ハローワークの基準に照らし合わせて適切な処理を行うことが経営者の責任です。
従業員の不利益を防ぐための雇用維持と処遇の交渉
そもそも、従業員に履歴書の書き方で悩ませないためには、M&Aの交渉段階で「従業員の雇用維持と処遇」について譲渡先としっかり合意形成しておくことが最善の策です。
赤字や債務超過で事業譲渡を急ぐあまり、従業員の処遇についての取り決めを後回しにしてしまうと、結果的に彼らを苦しめることになりかねません。
詳しくは会社売却時の社員・従業員の処遇と雇用維持のポイントの記事でも解説していますが、誠実な買い手を見つけることが何よりも重要です。
優秀な人材は譲渡先にとっても宝であり、彼らが納得して働ける環境を整えることは、事業譲渡を成功させるための必須条件となります。
従業員への説明会を丁寧に行い、転籍後の待遇に関する不安を一つひとつ解消していくことが、経営者としての最後の大きな役目と言えるでしょう。
グループ会社への転籍や吸収合併、出向から帰任した場合の履歴書の書き方
事業譲渡に限らず、企業の組織再編には様々な手法があり、それに伴う経歴の書き方も複雑になります。
親会社から子会社への異動や、異なる法人格への吸収合併など、履歴書を一目見ただけでは状況が伝わりにくいケースも少なくありません。
ここでは、特殊なケースにおける履歴書の正しい書き方を整理し、採用担当者に誤解を与えないためのポイントを解説します。
グループ会社に転籍した場合や吸収合併時の具体的な書き方
親会社から子会社、あるいはグループ内の別法人へ移る「履歴書 グループ会社に転籍」のケースでは、企業名が変わるため明確な記載が必要です。
単なる部署異動のように見えないよう、どの会社へ籍を移したのかを時系列で正確に記すことが求められます。
また、「履歴書 吸収合併 書き方」として悩む方が多いですが、合併により自社が消滅し存続会社へ移った場合は、その旨を端的に記載します。
「〇〇年〇月 〇〇株式会社(吸収合併により△△株式会社へ商号変更)へ転籍」
このように、元の会社名と合併先の会社名、そして商号変更や転籍の事実を1行または2行でわかりやすく併記します。
「〇〇年〇月 会社都合により、関連会社である株式会社〇〇へ転籍」
グループ内の異動であっても、自己都合ではないことを明確にするため「会社都合により」という言葉を添えるのが安全です。
このように記載することで、短い文章でも組織再編の全体像が伝わり、面接での不要な詮索を避けることができます。
従業員が迷っている場合は、人事部門や経営者自らが履歴書の具体的なフォーマット案を作成して配布するといったサポートを行うと非常に喜ばれます。
出向先からの帰任が生じた履歴書の記載方法
さらに複雑なのが「履歴書 出向 帰任」のパターンです。
出向期間が終了し、元の会社に戻ってから退職・転職活動を行う場合、出向していた事実とその期間を正確に記載する必要があります。
記載例としては、「〇〇年〇月 △△株式会社へ出向」とし、その次の行に「〇〇年〇月 △△株式会社への出向期間満了につき、〇〇株式会社に帰任」と記載します。
このような複雑な雇用関係の調整や、従業員対応の多さに疲弊してしまう経営者の方は非常に多くいらっしゃいます。
もし、資金繰りの悪化や従業員の処遇に関する重圧から「もう廃業するしかないのか」と思い悩んでいるのであれば、決して一人で抱え込まないでください。
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赤字や債務超過であっても、あなたの会社が持つ技術や人材、顧客基盤に価値を見出してくれる企業は必ず存在します。
従業員の雇用を守りつつ、経営者ご自身の再スタートを切るためにも、実務経験豊富なM&Aのプロフェッショナルに伴走してもらうことが成功への近道です。
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個人事業主の事業譲渡・廃業に伴う従業員の経歴記載と手続き
これまで法人のM&Aを中心に解説してきましたが、個人事業主が事業を譲渡する場合や、やむを得ず廃業を選択する場合にも、雇用している従業員の経歴に関する配慮が必要です。
法人の場合は株式譲渡によって雇用契約がそのまま引き継がれるケースもありますが、個人事業主の事業譲渡においては、必ず一度雇用契約を終了し、譲渡先と新たに結び直す「転籍」の手続きが必要となります。
そのため、従業員は履歴書に「事業譲渡に伴い〇〇株式会社へ転籍」と記載することになりますが、屋号での雇用から法人への転籍という流れを明確に書くことが重要です。
個人事業主が事業を譲渡・廃業する際の具体的な記載例と注意点
個人事業主として雇用していた従業員が、事業譲渡によって新たな企業へ移る際の履歴書の書き方は、少し工夫が必要です。
例えば、「〇〇年〇月 個人事業主 〇〇(屋号)入社」と記載した上で、次の行に「〇〇年〇月 事業譲渡に伴い、〇〇株式会社へ転籍」と明記させます。
このように書くことで、採用担当者は「個人経営の店舗や事業所から、事業承継によって法人へ移ったのだな」と経緯をスムーズに理解することができます。
一方で、買い手が見つからず、やむを得ず廃業を選択し、従業員を解雇せざるを得ない非常に苦しいケースもあります。
この場合、従業員の履歴書には「事業所の閉鎖により会社都合退職」と記載するよう指導してください。
決して「自己都合退職」にしてはいけません。失業保険の給付日数や給付開始時期において、従業員に多大な不利益をもたらすためです。
店舗閉鎖や廃業時に経営者が直面する煩雑な手続き
従業員のケアと並行して、個人事業主の廃業には非常に多くの事務手続きが待ち受けています。
税務署や都道府県税事務所への届出、社会保険事務所での資格喪失手続きなど、限られた時間の中で抜け漏れなく対応しなければなりません。
具体的な手続きの流れや、オンラインでの効率的な申請方法については、個人事業主の廃業手続きとe-Taxでの届け出方法の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
廃業日から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。従業員を雇用していた場合は、「給与支払事務所等の廃止届出書」も併せて提出する必要があります。
店舗や工場を閉鎖する際、設備や在庫をどのように処分するかは大きな課題です。廃業時の在庫処分・不用品売却の手順と仕訳処理を参考に、少しでも現金化し、退職金や未払金への原資に充てる工夫が求められます。
退職を余儀なくされた従業員に対し、速やかに離職票を発行し、履歴書の書き方をアドバイスするなど、最後まで誠意を持って対応することが経営者の責任です。
個人事業主の廃業は、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴います。
しかし、事業そのものに価値があれば、機材や顧客リストを含めた「事業譲渡」という形で第三者に引き継ぐことが可能なケースも多いのです。
最初から廃業だと諦める前に、まずは外部の専門家に可能性を診断してもらうことを強くお勧めします。
赤字・債務超過で廃業を考える前に!M&Aによる従業員救済の道

「うちの会社は慢性的な赤字で、借入金も膨らんでいる。事業譲渡なんて夢のまた夢だ」
私がこれまでお会いしてきた多くの中小企業経営者の方は、ご自身の会社の価値を過小評価し、最初からM&Aという選択肢を捨ててしまっていました。
しかし、財務状況が悪くても、熟練した従業員や長年培ってきた取引先とのネットワークに魅力を感じる買い手企業は確実に存在します。
自社の適正な価値を知ることからすべてが始まる
従業員の雇用を守り、彼らの履歴書に「事業所閉鎖による解雇」という悲しい一文を刻ませないためには、経営者が最後まで事業存続の道を模索する姿勢が不可欠です。
赤字や債務超過であっても、事業の一部を切り出して譲渡するスキームなど、再生の手法はいくつも残されています。
まずは、自社にどのような価値が眠っているのかを客観的に把握することが第一歩となります。
企業の価値は、単純な貸借対照表上の純資産だけで決まるものではありません。
独自の技術力、顧客リスト、立地条件、そして何よりそこで働く従業員のノウハウなど、目に見えない資産(のれん代)が大きく評価されることが多々あります。
具体的な評価方法や相場観については、会社売却の査定・企業価値評価の相場と決まり方の記事で詳細に解説していますので、ご一読いただき、自社のポテンシャルを再確認してください。
⭕ M&A・事業譲渡のメリット
- 従業員の雇用を維持し、転籍先での安定した待遇を確保できる
- 経営者の個人保証(経営者保証)を解除できる可能性が高い
- 廃業にかかる莫大なコスト(解体費、在庫処分費)を回避できる
❌ 廃業を選択した場合のデメリット
- 従業員を一斉に解雇することになり、路頭に迷わせてしまう
- 多額の廃業費用が自己負担となり、借金だけが残るリスクがある
- 長年お世話になった取引先や顧客に多大な迷惑をかけてしまう
悪質なM&A仲介業者を避け、信頼できるパートナーを選ぶ
ただし、M&Aを進めるにあたっては、相談相手となるアドバイザー選びに細心の注意を払わなければなりません。
近年、事業承継のニーズが高まる中で、法外な着手金や中間金を要求しておきながら、全く買い手を見つけてこない悪質な仲介業者も急増しています。
資金繰りに窮している状況で、結果が保証されない着手金を支払うことは、会社にとって致命傷になりかねません。
このようなリスクを完全に排除するためには、「完全成果報酬型」を採用しており、成約するまで一切の費用が発生しない専門業者を選ぶことが鉄則です。
実際に多くの困難な案件を成約に導いてきた実績のある企業を選ぶことで、従業員の雇用維持という最優先課題を守り抜くことができます。
優良なアドバイザーの見極め方については、株式会社NextDealの口コミ評判と料金の記事にて、業界の裏側も交えながら詳しく検証していますので、業者選びの判断材料としてご活用ください。
事業譲渡における履歴書の疑問まとめ!経営者が最後にできること
ここまで、事業譲渡に伴う転籍や出向、退職時の履歴書の書き方について、法的観点と実務的な視点の両方から解説してきました。
複雑な経歴の記載に悩む従業員に対して、経営者が自ら率先して正しい記載方法を指導し、「会社都合の異動であり、決してあなた自身の評価を下げるものではない」と背中を押してあげること。
それこそが、これまで会社を支えてくれた社員に対する最大の報恩であり、経営者としての最後の重責と言えるでしょう。
経営者としての孤独な決断をサポートする存在
事業譲渡や廃業の危機に直面したとき、経営者は誰にも相談できず、孤独の中で重い決断を迫られます。
「従業員をどう守るか」「自分の家族の生活はどうなるのか」「金融機関への返済はどうすべきか」など、次々と押し寄せる問題に圧倒され、正常な判断ができなくなってしまうことも珍しくありません。
だからこそ、手遅れになる前に、事業再生やM&Aの実務に精通したプロフェッショナルに相談することが何よりも重要なのです。
「もうダメかもしれない」と思ったその瞬間が、実は再生へのスタートラインです。一人で抱え込まず、外部の客観的な視点を取り入れることで、思いもよらなかった解決策が見つかるケースを私は数え切れないほど見てきました。従業員の笑顔を取り戻すためにも、まずは一歩を踏み出してください。
もし現在、会社の先行きに強い不安を感じており、従業員の処遇を含めた事業の引き継ぎについて悩んでいるのであれば、会社売却・事業譲渡の無料相談を活用して、現在の状況をありのままに専門家に伝えてみてください。
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まとめ:事業譲渡に伴う履歴書の書き方と留意点
- 事業譲渡による従業員の異動は転籍と出向で明確に書き分ける
- 転籍の場合は譲渡元との契約を解消し譲渡先と新たに結び直す事実を記載する
- 出向の場合は元の会社に籍を残したまま譲渡先の業務に従事する形態である
- 異動の事実を履歴書に記載しないと採用後に経歴詐称に問われる危険がある
- 意図的な経歴の隠蔽は社会保険や雇用保険の加入記録から容易に発覚する
- 組織再編を経験した事実は環境への適応力として転職市場でプラスに評価され得る
- 事業譲渡が直接の原因となる転籍は原則として会社都合の異動に該当する
- 履歴書には事業譲渡に伴う転籍である旨を明記し自己都合による異動と区別する
- 労働条件の大幅な不利益変更を理由に退職する場合も会社都合退職として扱われる
- 会社都合であることを明記すれば面接時のネガティブな深掘りを未然に回避できる
- 吸収合併の場合は元の会社名とともに存続会社へ転籍した事実を併記する
- グループ会社間での転籍であっても会社都合の異動であることを書き添える
- 出向先からの帰任は出向期間満了の旨と元の会社に戻った事実を時系列で記載する
- 個人事業主の事業譲渡や廃業においても屋号から法人への転籍経緯を正確に書く
- 経営者は従業員が不利益を被らないよう関連法規に基づく正しい記載を指導する
信頼性を高めるための参考資料(公的機関の一次情報)
本記事で解説した事業譲渡や退職時の扱いに関する公的な判断基準やガイドラインは、以下の一次情報源からご確認いただけます。

